螺旋上の赤
花奈との待ち合わせ時間から遅れること15分。

「相変わらずルーズでごめんねぇ……。」

「別に平気だよ。凛ちゃんの事を待つの、嫌いじゃないよ。」

何て良い子なんだろうか。
この寒空の下で待っていてくれて、文句も出ない上にこの笑顔とは恐れ入る。
ファミレス横のくたびれた植え込みに、満開の花が見える様だ。
さっきまでの事が嘘の様。花奈ちゃんマジ天使って感じである。
外は寒いし、さっさとファミレスへ行って暖かい飲み物でも頼みましょうかね。
花奈ちゃんの分も私が奢っちゃおう。
お世話になりますからね。うん。


「あれ?凛ちゃん、アレックスは?」

「え?」

言われてカバンを確認する。
そこにあるはずの物が存在しなかった。
アレックス……たとえカバンが替わっても、小学校からずっとつけている熊のキーホルダー。
即座に浮かぶのは橋の上での出来事。

(あの時か?坂の上で自転車につまずいて転んだ時、紐が千切れて落としちゃったのかも……。)

嫌な思いだけじゃなく、お気に入りのキーホルダーまで落としてたとは……。
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