螺旋上の赤
課題を進め始めて2時間が過ぎた頃。
ふと店内を見渡すと、私たちの回り以外はほぼ満席だった事に気付いた。
遠くの席では卒論が終わったのか、先輩達がクリスマスの予定について話しているのが聞こえる。
卒業パーティでもするのだろうか。

私はこの課題が終わらないとクリスマスもお正月も来ない。
格差を感じるばかりだ。

「花奈様、お待たせ致しました。ご所望の紅茶でございます。」

執事風にドリンクバーで汲んだ紅茶を置き、今日のVIPをもてなす。

「ふふっ、ありがと。」

ふんわりした花開く様な微笑みには、女の私でも少しトキメいてしまう。

(さて、続きを始めますか!)

純白のレポート用紙を広げ、みるみるレポートを進めていく。
花奈先生のレポートを参考にしつつ。

あくまで参考であり、丸写しではない。
語尾とかはちゃんと変えているし、倒置法や反復法も交えている。
課題である英作文の文面には一部の隙も無い。完璧である。

当人は本気でそう思っているが、英文科の課題に倒置法や反復法を使っているのである。
丸写しでは無い感を無理矢理出そうとしているため、支離滅裂な文章になってきてしまってはいるが、内容は何とか伝わるので及第点は貰える……だろう。多分。
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