螺旋上の赤
「——はい、出来たよ。」

玄関の有に靴を手渡す。
有は立ち上がって、靴を受け取った。

こうして近くで見ると思ったより慎重高いんだな……。
20cm以上は差があると思う。

「好きな髪型はショートボブだ。」

有が急に口を開いた。
そして、私の髪に触れ、横の髪をそっと耳にかけた。

ドクン

締め付けられたように、胸が苦しくなる。

「変わらないね。こうすると、あの時のままだ。」

見上げると、至近距離で目が合った。
あの日、あの駐輪場での出来事が脳裏をよぎる。

ドクン

ドクン


「じゃあ、帰るわ。
 バイトの面接合否の電話が来ることになってるんだ。
 昼間、凛と話す時間を諦めてまで行ってきたから、逃すわけにもいかないし。
 靴、ありがとな。そんじゃ、また。」

バタン。
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