エチュード ~即興家族(アドリブファミリー)~
「ごめんね、秀一郎。ごめん・・・ごめんね・・・」

自分がどれだけ息子に不憫な思いをさせていたのか。
どれだけ息子に寂しい思いを背負わせてしまったのか・・・。
今、こうして秀一郎を抱きしめることで、その大きさと重さと、10年経った歳月を、改めて思い知った。

「秀一郎。あなたに・・お父さんのことを話さなかったのは、善が芸能界で活躍している有名人になっていたから、というのが一番大きな理由。でも、善が有名人じゃなくて、普通のサラリーマンとか、先生とか」
「義虎伯父ちゃんみたいな?」
「そう。それでも、お母さんはあなたに、お父さんのことを話さなかったと思う」
「どうして?」
「お父さん・・善は、秀一郎がいるってことを知らなかったから。突然“あなたには息子がいる”って聞かされたら、有名人でもそうじゃない人でも、ビックリすると思うの」
「そうだね」と言って頷いた秀一郎の頭を、私は優しく一撫ですることで、自分の思いを正直に話す勇気と力を、息子から分けてもらった。

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