エチュード ~即興家族(アドリブファミリー)~
「僕、一緒に立ち向かうことはできないけど、善さんが僕のお父さんだっていう事実に背を向けることはしないよ。もしかしたら、たぶんそれが、僕の立ち向かい方だと思う」
「うん。うん・・・それでいい。秀がそうしてくれるだけで俺・・・すっげー心強い」と言った善は、今にも泣きそうな顔をしている。

そして彼の大きな手は、伸ばした私の手の方へ伸ばされて、画面越しに手のひらを合わせあっていた。

「アキちゃん」
「はい?」
「社長とも話し合ったんだが、俺は沈黙を貫くことにした。ここで釈明会見開いても、事が大げさになるだけだし。アキちゃんと、何より秀のことを表沙汰にしたくないんだ」
「それは私も同意見よ」
「よかった。もし、記者さんたちに何か聞かれても、友だちや知人が何か言ってきても、アキちゃんもノーコメントを貫いてほしい」
「分かった」
「俺らもそうすりゃいいんだな?」と聞く兄に、善は「おねがいします」と答えた。

< 135 / 183 >

この作品をシェア

pagetop