エチュード ~即興家族(アドリブファミリー)~
ドアを閉めた私は、そこに背中を預けた。
上を仰ぎ見ながら、細く長いため息を、一つつく。

会話が続かなくてもいい。
それよりも、沈黙がいたたまれないと思うことの方が問題だと思う。

このままじゃあやっぱり・・・私たち、うまくいかない。

顔を正面に戻した私は、意を決して一歩前に踏み出し・・・ボストンバッグに荷物を詰め始めた。





リビングに善はいなかった。
音楽関係グッズを置いてる部屋にもいない、ということは、寝室か。

私は善の寝室のドアをノックすると「善」と呼びかけた。
だけど返事がない。

あれ?善、出かけたのかな。
でも、出かけるなら必ず私に言うはずだ。

もう一度ノックして「善!」と言うと、「うをーい!」という元気な善の声が聞こえた。

なに、今の声は!
ついクスッと笑いながらドアを開けると・・・。

上半身裸の善が、髪をタオルで拭きながら、私の方を見ていた。

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