エチュード ~即興家族(アドリブファミリー)~
「秀の見舞い。言ったろ?一度は来るって」
「私は“来ないで”って頼んだでしょ」
「そんなん却下に決まってんだろ」
「は・・・」

善って・・・こんなに強引な人だった、っけ・・・?

ポカーンとした顔で見上げる私に、ニコッと微笑む善は、どうやら私が前回言ったことを聞く気はないらしい。

「さっき音大の近くにある広場で、ゲリラライブしてきたんだ」
「あ・・・そぅ」
「ちゃんとシャワー浴びてきたから、汗臭くねえと思うんだけど」と言いつつ、自分の腕をクンクン嗅いでいる善を見ていた私の顔に、笑みが浮かんでしまった。

「この日のためにスケジュールを調整した。ほとぼりが冷めるまで、ここには近寄らなかった」
「それは・・・自業自得、でしょ」

と呟く私の声が弱弱しいのは、善の顔が、とても切なく見えたから。
善の全てが「秀一郎に会いたい!」と叫んでいるから。

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