エチュード　～即興家族（アドリブファミリー）～
「記者さんも追ってきてない。だから頼むよ、アキちゃん。秀に会わせてくれ」
「ぜん・・・」
「５分でいい。頼む。アキちゃん」
「ちょ・・っと善っ！」

今にも土下座しそうな勢いで頭を下げる善の姿は、秀一郎に会いたいという一途な思いでいっぱいだった。

ここまでされちゃうと・・・いや。
ここでしっかり断らないと、この先・・・でも。

父親が息子に会いたいと思うのは、当然の心理じゃない。
そんな思いを、私の一存で打ち砕いてしまってもいいの？
という気持ちが、私の心を占めていく。

善は秀一郎に危害を加えたりしない。
そんな危険人物じゃない。
だったら・・・。

「分かった」
「マジ？」

やっと顔を上げて私を見る善は、今にも泣きそうな顔をしているような気がする。
だからなのか。
善を抱きしめたい衝動にかられてしまった自分に、かなりビビってしまった。
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