銀座のホステスには、秘密がある
「でも今は、上杉ちゃんはサラちゃんだろ?」
「いいえ。アタシじゃないですよ。うちのお店に移店してきた癒し系の娘がいるんです。たぶんその娘が上杉様のお気に入りなんだと思います」

ちっちゃくて癒し系で天然。
どれを取っても彩乃さんのことじゃない。

彩乃さんは殿のタイプのど真ん中だったって訳ね。
よく分かった。
だったらさっさと言っちゃって、恋人同士でも何にでもなっちゃえば?

あー。そっか。
この前まで彩乃さんがいたお店の女が邪魔してるのね?
あっ。それとも殿の上司の村岡様?
そうね。どちらかと言えばそっちかもしれない。
村岡様のことを気にしてるのか。

「サラちゃん、どうした?あれ?機嫌が悪くなっちゃった?」
「いいえ。別に」
「怒ってる?。え?え?もしかして上杉ちゃんにヤキモチ妬いてるの?」

「ぎゃはは。物好き―」ってまっつん教頭が大笑いしだした。

物好きって殿に対して失礼だと思うのに、
殿は嬉しそうに笑ってる。

「いいえ。アタシはヤキモチなんて妬いてないですよ。ただ、殿は気が多いんだなって」
「とのぉ?何?上杉ちゃん、殿って呼ばせてるの?」

「うん」
照れながらクシャリと笑う殿に、「ぎゃははー。ついにそこまでいったかぁ」って笑い転げてるまっつん教頭。

そんな二人のノリに入って行けない。
なんだかイライラする。

「ごめんなさい。あとはお二人でどうぞ」

もう限界だった。

こんなことしちゃいけないって分かってるのに、殿を置いてお店を出てしまった。

もう指名してもらえないかもしれない。
それどころかお店にも来てもらえないかも……
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