シークレットガール!【完】
“サクラ サクラ サクラ”
何でこんなに彼は泣いているのだろうか。
彼の耳には、桜の花びらのピアスがキラリと光る。
ふと、あることを思い出す。
“ねぇ知ってる?402室の藤崎さくらさんって。あの子、もう余命が少ないんですって”
“とても可愛らしい子だったわよね。それに彼氏くんもスゴいイケメンで美男美女な感じだったわよね”
“そうそう。なんか、彼氏くん可哀想よね。彼女がいなくなってしまうなんて。いつも、桜の木の上で泣いてるわ”
病院を歩いていたとき、聞こえたベテランの看護師さん達の会話。
彼は看護師さん達のいう“藤崎さくらさんの彼氏くん”だと確信した。
“藤崎さくら”って人が酷く羨ましかった。
だって、こんなにも悲しんでくれる人がいるのだから。
あたしなんて、………………。
黒く渦巻く感情が胸の中を縦横無尽に動き回る。
けれど、あたしは彼をほっておきたくないと思ってしまった。
彼の涙が美しいと思ってしまった。
だから、毎日、彼が泣いている桜の木を窓から見ていた。
…何をしたいのだろうか。
理由なんて分からなかった。
ずっと見ていて、分かったことは沢山ある。
彼は彼女さんの前では笑顔で振る舞っているらしく、弱味を見せないということ。
あたしは、もし彼女のように学校に行ったら彼のような存在が出来るかもしれない。
そう思って、あたしは高校行きたい。なんて思った。
もともとあたしは高校に行くつもりは無かった。
名前も知らない彼と藤崎さくらさという彼女に心を動かされたのである。
本格的に高校に入ろうと思ったのは、3月で。
もう合格発表も終わっていた。
けど、どうしても入りたくて。
その高校の理事長やら色々な人と掛け合い、運よく特待生枠を手に入れた。
──『ねぇ北府高校に入学するの?』
綺麗なソプラノ声が聞こえて、あたしの世界が色づき始めたのだ。