タカラモノ~小さな恋物語~
「な、なんで…?」
ぽろぽろと涙は止まる気配がない。
「…っ」
なんで涙なんか…。
私、どうしちゃったの?
「飛鳥ー?大丈夫ー?」
しばらくすると、お母さんの声が一階から聞こえてきた。
「うん、今行くー!」
私はティッシュで目元を押さえ、鼻をかんだ。
こんな情けない自分を今は誰にも見られたくなかった。
今はもう考えるのをやめよう。
何も考えない。
宇野さんのことも、ケンのことも…。
早くしないと、コーンスープ冷めちゃう。
私は鏡の前に立って、笑った。
大丈夫、何も起きちゃいない。
いつもと変わらない毎日。
いつもと変わらない自分。
いつもと変わらないケンとの関係。
私はそう自分に言い聞かせて部屋を後にした。