タカラモノ~小さな恋物語~
「つまり、俺とは行きたくないと…」
「あ、ちが、そうじゃなくて…!」
ケン、なんで…なんでそんな顔するの?
どうして…
「つぅーか。」
ケンは髪をくしゃっとして掻きあげながら聞いた。
「ももてぃは俺と宇野が水族館行っても何とも思わねぇんだな。」
「えっ…」
「…何にも思わねぇんだな。」
「ケ、ン…」
「まっ、そうだよな。それがももてぃだもんな。」
ケンは嘲笑うかのように、フッと笑った。
また、モヤモヤする。
違う、そんなんじゃない。
私だって…私だって…
たくさん考えた、たくさん悩んだ。
苦しくて、苦しくて、どうしようもなかった。
そう言いたいのに、何も言葉が出なかった。
「分かったよ、ももてぃのお望み通り宇野と行くわ。」
「……。」
「それでいいんだろ?」
「……。」
「なぁ、ももてぃ!」
言葉を少し荒げたケンに、ビクッとなった。
「う、うん…。」
私はただ俯いて、頷くことしかできなかった。
「じゃ、貰っとくわ。」
しばらく沈黙が続き、ケンがそう言ったところで、石井さんが休憩から戻って来た。
「あ、じゃ、俺今日上がりなんで、お疲れっす。」
ケンは石井さんにそう言って、ロッカールームへと戻って行った。
もう、私の目も姿も見てくれなかった。