タカラモノ~小さな恋物語~
鈴音さんが休憩から戻って、夜閉めるまで、一切水族館の話はしなかった。
多分、鈴音さんは上手くいったとでも思っているんだろう。
けれど、そっちの方が良かった。
言いたくもなかったし、説明すら大変だから。
鈴音さんに対して怒っている、というつもりなんて1ミリもない。
鈴音さんは私とケンのことを大切に思っていてくれるからこそ、の行動だと思うから。
「水族館、楽しんでんね!お疲れ様~」
鈴音さんは笑顔でそう言って、私は曖昧に笑って、別れた。
ケンから連絡の1つないかと、淡い期待を抱いてスマホを確認するものの、特に無し。
むしろ来て欲しくなかったのような人から連絡が入っていた。
【飛鳥さん、紗彩です。こんばんは!
健吾くんから土曜日会えないかって連絡貰いました!
飛鳥さんがもしかして健吾くんに押してくれたのかなぁって。
健吾くんから連絡貰うなんて初めてです!
本当にありがとうございます!】
改めて、今日のことが突きつけられる。
「はぁ…」
重たいため息だった。
きっとケンは土曜日に水族館に行くのであろう。
宇野さんと…。