タカラモノ~小さな恋物語~
「な、何言って…」
「俺、ももてぃと水族館行きたい。」
「ケン…」
「宇野とじゃなくて。ホラ、鈴音さんだって俺とももてぃにって言ってただろ?待ってるから、来て。」
ケンはそう言って電話を切った。
手が震えた。
こみ上げるものがあった。
何かは分からない、けれど嬉しかった。
支度…しないと。
私は鏡の前に立って笑った。
寝不足でひどい顔、けれど今はそんなこと気にならなかった。
洗顔をする。
髪をゆるっと巻く。
化粧をする。
30分もかからずに終わった。
リビングには置手紙があった、お母さんたち出かけたみたい。
家にいると言ったのにも関わらず出かけることに、少々うしろめたさを感じながらも、お母さんにショートメールを入れておいた。
そして、最近の一番のお気に入りのセーターを着た。
スカートを履こうかと思ったけれど、寒いからスキニーパンツを履く。
「大人め…コーデかな?」
香水をつけて、ケンからクリスマスプレゼントでもらったイヤリングを着けて、コートを羽織り、今年買ったマフラーを巻いて、最後にもう一度鏡の前に立った。
「笑顔で、私。」
そこにはケンと電話をする前までと打って変わった自分がいた。