タカラモノ~小さな恋物語~
「ケンっ…」
あの電話から1時間半、私は駅前へ着いた。
「なーんだ、意外と早いじゃん。」
「ケン、ずっとここにいたの?」
ケンは駅前のベンチでコーヒーを飲みながら、音楽を聞いていた。
「さぁな、よし、行くか。そろそろ電車来るし。」
「あ、うん…」
本当に違和感がなかった。
いつも通りの私とケン。
ただ、バイトの休日で私服で会うのは初めてだった。
いつもよりケンが大人びて見えた。
あ、この香り、ケン香水使ってくれてるんだなぁ。
私はクスッと笑みをこぼし、ケンの後を追いかけた。
違和感は無いものの、特に喋らないケン。
やっぱりこれでもケンカした後。
まだちゃんと謝れてない。
私は見かねて、「ケン、この間は…」と言ったら、ケンはそっと自分の唇に人差し指を当てた。
「その話はあとでな。とりあえず水族館、楽しもう。」
ケンは優しく笑った。
「う、うん…」
ケンの些細な笑顔に、なぜかドキッとした。
今日の私の心臓はせわしく鳴り続けていた。