MAHOU屋
今日の宿題に読書が出る。
五時間目に知らされたチヒロは、クラスみんなと図書室に来ている。
決まった人から教室に戻るのだけれど、チヒロはみんなのようにぱっと決められなくて、一年生のときは担任の先生に「これがいいんじゃない?」とすすめられることが多かった。


さすがに二年生になってそういうことは(今のところ)ないけれど、決まって図書室から出るのは最後のほう。
今日も残っているのは三人くらいで、ひとりではないことにちょっとほっとする。
そうでいて、ひとりにならないかなぁとも思っている。
そうでなくては「魔女シリーズ」の本が借りられない。


「魔女シリーズ」は「おおかみおとこシリーズ」の隣にいつも置いてある。
「魔女シリーズ」は全部で十巻、「おおかみおとこシリーズは」二十五巻以上並んでいる。
「おおかみおとこ」は今でも新作を発表していて、本屋さんで売っていたりもする。


そのシリーズには必ずあとがきで、作者の近況写真が載っていたりする。
シリーズの中で唯一顔写真が載っている巻があるのだけれど、その顔がデビルにどことなく似ていて、デビルがもう少し歳を取ったらこんな感じなのかなと思ってしまったことがある。


チヒロは代本板で埋め尽くされている棚から、辛うじて残っている本を手に取る。
「魔女シリーズ」の四巻目。
一度読んだことがある本だったけれど、タイトルが周りの人からわからないように胸で抱きかかえ、ようやく図書室をあとにした。


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