気まぐれ猫系御曹司に振り回されて
「いいお天気ですね」

 凜香が言っても、男は小さくうなずいただけだ。上からひょいと覗き込むと、チャコールグレーのワークキャップとその下のサングラスが見えた。

(なんか……ますます怪しい)

「ご近所なんですか?」

 凜香が男の横に回り込もうとすると、男は新聞を動かして顔を隠した。

(やっぱり変!)

「何か気になるニュースでもありますか」

 凜香は我慢できずに男の隣に座って新聞を覗き込んだ。

「わっ」

 男が驚いた声を上げた拍子に片手が新聞から離れた。

「あれ」

 サングラスをしているとはいえ、見覚えのあるその輪郭に、凜香は眉を寄せる。

「ひょっとして……透也くん?」

 男は観念したのかサングラスを外した。

「やっぱり!」

 現れたのは昨日偽のデートをした相手、透也だ。

「こんなところで何してるの? あなたのマンションからすごく遠いじゃない」

 凜香は透也の気まずそうな表情を見て「まさか」と気づいた。

「私をつけてたり……してない?」
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