気まぐれ猫系御曹司に振り回されて
「うちの妻が張り切ってたくさん作ってきたんですよ。一緒に食べてもらえると喜ぶと思いますよ」

(遠慮しなさい!)

 凜香は牽制するように透也を見たが、彼は見たことがないくらい愛想のいい笑みを浮かべていた。

「ぜひ、お言葉に甘えさせていただきます」
「ちょっと!」

 凜香は透也を睨んだが、彼はそしらぬふりで視線をそらした。

「人数が多い方が楽しいですよね。じゃあ、こちらへどうぞ。妻の作る唐揚げはとくにおいしいんですよ」

 康人が背中を向けて歩き出したので、凜香は小声で透也に言った。

「なんで断らないのっ。ずうずうしいにもほどがあるわっ」
「誘ってくれたのは凜香じゃなくて、塩田さんだからね」

 透也が足取り軽く歩き出し、後に残された凜香は拳を握りしめた。

(何考えてるのよ、もう!)

 そうしてあわてて二人の後を追いかけた。

 凜香が涼香のところに戻ったときには、成実が目を輝かせて透也に話しかけていた。

「わあ、凜ちゃんの彼氏だぁ!」
「違うって。ただの後輩の葛木透也くん」
「はじめまして、葛木です。よろしくお願いします」
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