センターマイクの君へ(仮)
『…ルイちゃん行かない?』
「え?」
『行きませんかって誘ってるんだけど?』
クスっと笑うトリにルイは顔を赤く染めた。
「で、でも…家から花火見れるよ!」
この家からは、ベランダにいれば花火は綺麗に見える。そこがポイントらしい…。
『あぁ…確かに見えそうだな…』
それにルイは人ごみが嫌いだ。方向音痴のためかすぐに変な方向へ歩き出し最終的に迷子になってしまう。兄はソレが分かっていて、人ごみを歩くときは手を繋ぐなり服を掴むなりしてきた。
『でも、屋台とかは家にないだろ?それとも行くのイヤ?』
「え?!そ、そんなことないよ!!ただ…」
『ただ?』
ルイはチラリと兄を見た。ご飯は今作っているのを食べればもういらないだろう。部屋に籠もるだろうから居ないほうがまっしだろう…でも、迷子になったら…。
「私方向音痴でさ…すぐに迷子になっちゃうの…。いつもお兄ちゃんに掴まれて歩くんだけど…今日は仕事でお祭り行けそうにないんだ」
『…え?別にハルは誘ってないよ?』
「そうじゃなくて!お兄ちゃんが居なかったら、迷子になちゃうから…」
どんどん語尾が小さくなってしまう。この歳にして兄なしでは迷子になるだなんて…バカらしいというか、なんというか…
トリは一瞬間をおくが吹きだすように笑った。
『ハハっ、大丈夫!俺がちゃんと掴んでるよ』
「…え、で、でも…」