センターマイクの君へ(仮)


 行きたい。
 その一言でいっぱいだった。でも仕事で疲れてるのに自分の面倒をみるのはまた疲れてしまって迷惑をかけてしまう。

 言葉に迷うルイに、トリは優しい声で言ってきた。

『行こうよ!こないだの別荘で俺悪いことしちゃったしさ…、埋め合わせ?したいから』

 別荘のことって、約束より遅く来てしまったことを言ってるんだろうか?でも、それは仕事なんだから仕方ない。

「………」
『もー、どうせ迷惑かけちゃうとか考えてんだろ?そんなことないから行こうよ!』

「行ってこいよ」

 突然の声に振り返ると兄が立っていた。え?っと目を大きくするとクシャっと頭をなでた。

「林檎アメ買ってきて!…シノブがお祭り行きたいんだから連れてってやれよ」
「連れて行くって…立場逆だよ!」

 受話器に手を当て兄に言う。

「迷惑かけるとか考え考えてるなら、こっちが連れて行ってやる!って思えばいいんだよ。行ってこい」

 兄もトリもなんで自分の気持ちを見透かしているんだろう。グっと頭が下がってしまう。でも受話器からトリの声が聞こえるとルイは今まで言いたかった言葉を告げた。

「行きたい」
『…うん!行こう!』

 トリの元気な声がルイの涙を引き寄せる。なんでこの人はこんなに優しいんだろうか…

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