センターマイクの君へ(仮)


 待ち合わせの約束をし電話を切ると、ルイは大急ぎで兄のご飯を作った。待ち合わせ時間までにはまだ余裕だけど…いろいろ準備が必要なのだ。

 アタフタとしていると、兄がキッチンへ来てフライパンを握った。

「あとは俺が自分でするよ…。それよりいいの?そんな汗だくで…」
「…わかってるよ!だから急いでたのに…、あとよろしくね!」

 エプロンを脱ぎ兄に渡すとルイは急いで浴室へ向かった。
 シャワーを浴びながら何を着て行こうかと真剣に悩んでしまう。最近買ったあのワンピースにしようかな…でも、アッチの方がトリは好きかな?なんて考えていると、ふとルイはあるコトに気が付いた。


「な、なんで…こんなワクワクしてんの?トリ、トリって…まるでこれじゃー…」


 デートみたいじゃんか…


 そう自覚するとまた顔が真っ赤になる。

「いやいや、相手はデートって思ってないだろうし!…思ってないのかな?」


上がったり、下がったりするテンションにルイは祭りに行く前から少し疲れ始めていた。


 浴室から出ると急いで部屋へ行き髪を乾かす。普段あまりしないメイクもして、散々悩んだ服装を鏡の前でチェックする。

 そうこうしている内に、時間は過ぎていく。時計を見るともう家を出なければいけない時間になっていた。

「あぁ~!もう…遅刻しちゃうよー!」

 髪をアップにし鏡の前で最終チェックを終えると、ルイは階段を駆け下りそのまま玄関へ行き、最近かったミュールを履くと「いってきます」とだけ言い家を出て行った。



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