センターマイクの君へ(仮)

 優しいトリの手がいつものようにルイの頭を撫でようとしたが、アップしてある髪を見たのか手を止めた。

「お洒落してきてくれたの?」
「え?!あー…、う、うん」
「ルイちゃんあんまり可愛くなると俺困るからさ~」

 クスクスっと笑ってるトリの、笑いの意味をルイは分からなかった。それに何が困るんだろう?

「どうしたの?」
「ううん!じゃー、お祭り行く?場所もとらないといけないしね!」
「…よろしくお願いします。」

 そういうと、トリはまた笑いながら「ハイ」と答え、お店を出た。
 会場に向かい歩いているとトリは今日劇場であった話を始めた。

「俺の相方がさー、バカでさ~」

 トリは終始笑っている。
 待ち合わせ場所で会ったときも、今も…。すっごく楽しそうなトリに、ルイもつられ笑いをこぼした。
 トリの話の相方さんは寝坊して劇場にきたらしく、靴が左右違うモノだったらしい。でもそれを会い方さんは目が覚めていまだに気づいていないらしく、周りもオモシロイので誰もツッコミをいれず放置状態。

「そのままバイト行ったよあいつ。今頃バイト先で指摘されて顔真っ赤になってんだろう~な」

 意地悪なトリを見た反面、いつも優しいトリがそんなことをするんだとなぜか嬉しく思った。


 会場に近づけば近づくほど、浴衣を着た人がたくさんいる。ルイは浴衣姿の女の子をじっと見つめてしまった、それに気づいたトリは配っていたウチワを扇ぎながら言って来た。


「ルイちゃんの浴衣姿は、他のヤツに見せたくないからよかったわ~」

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