センターマイクの君へ(仮)
「…え?」
やっと女の子から視線をズラし今度はトリを見つめた。目が合うとトリはウチワでルイを扇いだ。
「また家でみしてくれたらええから、な!そんな浴衣着てるヤツみてどんよりすんなって!」
「…ど、どんよりって??そんな…」
「十分可愛いから!」
「トリ!変なこと言わないでー!」
「ハハハ!変なことと違うって」
ウチワでバシバシと手を叩きながら笑うトリをルイは頬を染めながら見つめた。
可愛いといわれることは恥ずかしいと思うけど、トリに言われるとなぜか少し嬉しい気持ちになる。それと同時に逃げたくなる…。
河川敷に入ると人の流れがすごかった。ルイは目が回りそうになり足を止めた。
「ルイちゃん?どうした?」
「…や、人が多くて…」
「あ~、多いな人…あ!ごめんごめん!」
トリは思い出したようにルイの手を握った。
「この手、離すなよ!」
ドキっと心臓が膨れ上がる。優しい微笑みから目をそらし、手に湧く汗に気づきルイハ離してとトリに願い出た。が、トリはイヤだと、さらに強く手を握ると人ごみを歩き始めた。
「トリ!お願い。一瞬だけ…汗が、ベトベトだから拭きたいの!」
「慣れたら止まるって!ほらほら、あんまよそ見してっとぶつかんぞ」
向かってくる人から守るためかトリはグイっとルイを引き寄せた。
「わ、わわわ!ごめん…」
「驚きすぎだから、早く行こう!場所なくなっちゃうよ」