恋愛ドクター“KJ”

恋愛必勝法

 “あの事件”から一週間が過ぎていた。
 そう。
 KJ、アスカ、一也の三人が、わざわざ池袋まで見知らぬ男女を追った日から、それだけの日にちが過ぎていた。

 あの一件以来、アスカはKJの存在というか言動が気になっていたが、高校生活を送るKJは、どこにでもいる男の子でしかなかった。
 授業態度も休み時間の過ごし方も、そして何よりクラスメイトとの会話でも、ごく普通の高校生だった。

 「どうみても、フツーの高校生なのよね。
 っていうか、どっちかって言うとバカっぽいんだけど‥‥」

 そういったアスカの視線の先には、ズボンのヒザに穴を開け、かすかに左足を引きずるKJがいた。

 穴はファッションではない。
 悪友の一也や友樹と一緒に、スクールバス停留所わきの崖を上る競争をして、したたかに打ちつけた結果だった。血までにじませている。
 しかも、その状態のまま、いまは今で“鬼ゴッコ”に夢中だ。

 「あれで高二?」

 すっかり呆れ顔のアスカだが、もちろん、KJの別の一面をイヤというほど見せつけられているので、頭からバカにはしていない。
< 43 / 59 >

この作品をシェア

pagetop