恋愛ドクター“KJ”
 「ねえ、KJ。
 チョッといいかしら」

 鬼ゴッコ遊びに飽きたのか、それとも足が痛くて不参加を決めたのか、席に戻ったKJに近寄ったアスカは、そう声をかけた。

 「うん。なに?」
 いったいどこから取り出したのか、ペットボトルを手にすると、キャップを開けてのどを潤す。

 「あら、きょうはサイダーじゃないのね。
 サイダーは頭の働きが良くなるんじゃなかったの?」
 少しヒニクを込めてアスカが言うと。

 「いまは頭も使ってないしね。
 人の身体って、水分が2%減ると、能力は30%落ちるんだよ。
 ピッチャーの松坂が出てたコマーシャルでもいってたよ。
 だから、いまは水分補給」
 KJは、いつもの説明口調で返事をした。

 「もう、2%とか30%とか、数学の話はいいわよ。私キライだし。
 それより、手伝って欲しいことがあるのよ。
 私の友達に矢野みどりっていう子がいるけど、知ってる?」
 アスカの話しぶりは、いつになく真剣だ。

 「しらない。
 何組の子?」
 KJは短く答えた。



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