恋愛ドクター“KJ”
 「レストランから出てきた二人は駅に向かうよね。帰るには。
 でも、フラレたばかりの女性は、そのまま一緒に駅に向かうことを躊躇するはずだよ。
 だから、レストランっていうか、ビルから出たところで別れたいんだ。
 男性は自然と駅に向かおうとする。とすれば、女性は公園側に歩くしかないよ。
 それに、公園には人も大勢いるし、それでいて赤の他人だから、何も詮索されないっていう状態が、彼女の癒しになるんだ。
 それが、女性が一人で公園へ来るっていう理由だよ」

 最後の最後まで、そしてここでも、KJの説明は理にかなっていた。

 と、その時だった。
 「あっ!」
 KJが声を上げた。
 その視線の先に顔を向けたアスカも、同じように声を上げる。

 あの女性だった。確かに一人でこちらに向かって歩いてくる。
 そして、そのすぐ後ろには一也の顔も見えた。

 「よし、いってみよう」
 そういったKJは、立ち上がるなり女性に向かって歩み寄った。
 あわててアスカもKJの後に続く。


 あの女性は、公園に集まっていた大勢の人の中に自然と溶け込むと、携帯電話を取り出した。
 そのすぐ横には、KJ、アスカ、一也の三人がいた。

 「‥‥うん。
 そう‥‥。きょうね、告白したんだ。
 でもダメだった。
 『今は仕事のことだけ考えていたい』って‥‥」


 両目を見開いて驚きを隠せないアスカと一也。
 そして、にっこりと笑うKJの顔があった。



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