明日晴れるといいね!
18
 美和は通信講座を受けることにした。やはり一人で勉強するとなるとどうしても見落としがちな点が出てくるのと実践的な経験を積んでおく方が受験にも得策だと考えたからである。

 そんなある日玄関のチャイムを鳴らす音がして美和は下りていった。玄関を開けると一人の少女がそこに立っていた。

 「あの惣一いますか」
 「いえ、今留守だけど」
 「じゃあ、また来ます」

 「何か伝えておきましょうか。お名前は」
 「かなって言います。また来ます。」

 そういうと何か他に言いたげな後姿で去っていった。

 そういえば最近弟の惣一は割りと早めに帰宅し部屋に閉じこもる。
何をしているのか気にはなっていたが美和は声を掛けられずにいた。

 と6時くらいに帰宅した惣一の方から話しかけてきた。

 「あねきギター始めたの。」
 「ええ、教えてくれる人がいて。そうそう今日かなって子が尋ねてきたよ。」

 「そう。」
 そっけない返事をする。

 「で勉強進んでる?あのさ、いらなくなった参考書とかあったらもらえないかな~」
 「いいけど」
 「おれさ、転校してもう一編高校行くことにしたから。いつまでもバカやってらんないし」

 「そうなんだ。お母さん喜ぶよ。お姉ちゃんは通信教育受けることにした。」
 「へえ~通信教育か。その手もありだな」
 「がんばりましょ」

 美和以上に悩んだであろう惣一が前向きに動き出したことが美和には嬉しかった。子供のころはよく美和の後ろに隠れあまり喋らなかった子。

 惣一は惣一で自分の将来を考えていたらしい。姉である美和もそんな惣一に負けられないと前向きに考え始めていた。

 その日母を囲み久しぶりに三人で食事をとった。
 「母さん俺北海道の高校へ行こうと思う。

いろいろ迷惑かけると思うけど俺も頑張るから」
 母の喜美恵は目頭を押えながらうなずいていた。既にいくつかのパンフも取り寄せているらしい。

 ただこうして家族が平静を取り戻そうとすればするほどまたぞろ美和の心の中で父の存在が大きくなり始めていた。
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