恋する淑女は、会議室で夢を見る
会場に入ってすぐ
白木匡に気がついたのは、真優ではなく桐谷専務だった。
「あ、CEO見っけ」
どうせまたからかわれているんだろうと思っている真優は、
ツーンと澄まして無視していたが
「いいの?挨拶しないで」
専務が振り返って見下ろすので
しぶしぶ会場を見渡した。
そして見つけたのである。
「ぁ!」
マー先輩を。
マー先輩こと白木匡は、数人の男性と談笑しているようで
こちらに気づいてはいない。
真優はとっさに桐谷専務にへばりつき
影に隠れた。
その様子をチラリと見た専務はクスッと笑って
白木匡がいる場所とは別の方向に進んでいく。
まっすぐに進んだその先にいたのは
このパーティの主役、U社の新社長である。
「おめでとうございます」
「あ!桐谷さま」
新社長と挨拶をしている桐谷専務の横で
真優はニコニコと相槌を打っていたが
心はマー先輩のことでいっぱいだ。
マー先輩に見つからないようにと、
白木匡がいる方向にしっかりと背中を向けていた。
ドキドキしながら
ふと、
私はどうして隠れるんだっけ?と、思わなくもなかったが、
スーツならまだしも
今日のこの慣れない格好で先輩の前に出るのは、ちょっと恥ずかしい…
何事もそれなりの準備が必要だからと、結論付けて
そうそう、そういうこと、と心で頷いた。