恋する淑女は、会議室で夢を見る


・・・




「…なるほど なるほど」

モゴモゴとひとりごちて化粧室に行った真優は


―― 何かないかな…

仕入れた情報が必要なものかは別として
忘れないように何かに書いておこうと、クラッチバッグを開けた。


バッグの中には真優が入れた覚えがない小さなメモ帳と細いペンがあり
それはユキが小さいお財布と一緒に入れてくれたものだった。

―― ありがとう!ユキ

…えっと、

B社の社長は愛妻家で
奥さまはご自宅で茶道教室を開いていて
その教室にはS社の奥さまも通われている… と



メモを取りながら、真優はホッとしていた。

退屈なだけかと思っていたパーティも
こういう過ごし方なら時間はあっという間に経つし、
顔見知りになったOL達と雑談に花を咲かせるというのは結構楽しいものだ。

なにしろこの調子では、専務についてパーティに行くことも増えるに違いない。
その度に迷うことなく、こうしてしっかりとした目的があれば気持ちがブレないで済む。



――それにしても 専務はモテるなぁ


話をしていた取引先の秘書に聞かれたのは、
全て桐谷専務のことだった。

真優も相手側の社長に関することを聞いていたのだから
お互いさまといえばそれまでだが、
聞いてくる内容が、少し引っかかる。

桐谷専務には恋人がいるのか?
桐谷専務の好みの女性は?
よく行かれるバーは?

あげくには
『ねーねー青木さん 桐谷専務
 私のこと何か言ってなかった?』
なんてことも聞いてきた。


モテるといえば、
P社の社長である父親についてくる令嬢も怪しい。

仕事とは思えない華やかな服装で現れて、
専務に媚を売っている。



――だいたい専務も専務だ

私への態度と違って
外面はやたらいいんだかっ

…まぁ 私にも優しい時は優しいけど…


ん?


まさか、私を追い払って
この前みたいに女子に囲まれてニコニコしてるんじゃないでしょうね


まったく

ブツブツ文句を言いながら
化粧室から廊下へ出ると



「あ!」




会場の扉の前に、


「こんばんは 真優」

「こんばんは

  …先輩」


マー先輩が立っていた。





・・・
< 125 / 210 >

この作品をシェア

pagetop