恋する淑女は、会議室で夢を見る
カチャカチャ
カチャ…
キーボードを打つ音が続かずに
真優はまた、大きなため息をついた。
はぁ…
コンコン
!
氷室先輩!
カチャ
「また、ため息ついてたな」
「あ… あはは
専務なら朝からお出かけしてますよ
戻りは2時か3時になると思います」
「そうか…」
少し考え込んだ氷室先輩は
思いついたように真優を振り返った。
「真優 昼はどうするんだ?」
「? 社食で済まそうかと」
「久しぶりに一緒に行くか?」
「! はい!」
時計を見れば間もなく12時だった。
通りに出ると、チラッと周りを見た氷室先輩は
「真優 和食でいいか?」と聞き、
「はい」
こんなところにお店が?と疑いたくなるような路地へ入っていった。
「え? ここお店なんですか?」
一見すると個人の邸のようなそこは
「「 いらっしゃいませ 」」
完全個室の料亭だった。
「遥人と食事をする時は
大体ここで待ち合わせるんだよ」
「へえーーー
でもなんかすごいですね…」
「目立ちたくないからな」
氷室先輩は御曹司という身分を隠しているし
桐谷専務も人目を気にせずゆっくりしたいだろう。
「… なるほど」
そう考えれば当然かもしれないが
久しぶりの氷室先輩とのランチは、
かつ丼や定食といった営業で出かけていた時のランチとは、随分と趣が違うものだった。