恋する淑女は、会議室で夢を見る

食事をしながら
真優が担当していた仕事の、その後を聞いたりしているうちに

氷室先輩はニヤリと口元を歪めた。

「で? ため息の理由は何なんだ?」




「…ちょっと

 友達の話なんですけどね
 友達が、悩んでいて」


「何を」


「…以前付き合っていた人に
 また好きだって言われたらしくて…

 氷室先輩

 先輩は恋人がいたことはあるんですよね?
 今はいなくても…」


「ん?」

「その元カノとまた付き合うこととか
 あったりするんですか?」


「それはないな」

氷室先輩は、そう即答した。


「後になってそんな風に思うくらいなら別れないし
 別れたってことは、それで終わりだ」


「・・・」




「ただし…」

そう言うと、氷室先輩は妖しく微笑んで
箸で挟んだ一切れの肉を見た。



「”逢い戻りは鴨の味” とも言うけどな」



舐められるように口の中に消えていく鴨肉を見つめていた真優は
ゴクリと息を呑んで、

自分の膳を見た。



朱塗りの半月膳の中央で
それは、長皿の上に飾り物のように盛り付けられている。



―― ”逢い戻りは鴨の味”




それはどんな味を言うのだろう…



そう思いながら 真優は
2枚の鴨肉をジッと見つめた…。



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