恋する淑女は、会議室で夢を見る






テーブル席のキャンドルの炎が
マー先輩の優しい微笑みをオレンジ色に映し出す。


はにかんだように微笑んだ真優が右に視線を落とすと、
ふと、バッグの中のスマートフォンが目についた。





『――これが?』

結局、専務が準備をすると言っていたものは
一見すると普通のスマートフォンであり

『このボタンを押すとGPSの通信が始まって
 このボタンを押すと”助けて~”のお知らせが俺のスマホに連絡が入るという
 簡単な仕組み』

発信機のようなものだった。


『今後は、これで連絡して
 電話はもちろん
 メールもSNSも連絡できるように設定してあるから』




―― 要するにそのスマートフォンは

『秘書である限り
 家に帰っても休日でも、常に携帯すること』

桐谷専務専用ホットラインだ。



『”助けて”ボタンを押すとどうなるんですか?』

『うちのSPが飛んでいく
 暇なら俺が飛んでいく かもしれない』



―― 暇ならって 失礼なんだから






「どうかした?」



「ううん」


慌てて左右に首を振る真優の向かいの席には、マー先輩がいる。

昼は仕事が入ったというマー先輩の都合で、夕方ロビーで待ち合わせ
高層階のレストランで夜景を見下ろしながら食事をすることになったのだ。
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