恋する淑女は、会議室で夢を見る



*...*...*...*...*





『先日、茶会にお宅の秘書さんがご友人と来てくださいましてね』

『青木ですか?』

『ええ』

聞けば社長夫人は茶道を通して、いつの間にか青木真優と交流を持っていたらしい。
愛妻家のB社の社長は、相好を崩してうれしそうに語っていた。

青木真優の話が出たのはB社の社長だけではない、
K社に行った時も帰り際
『今日はいつもの秘書さんは一緒じゃないのですね』とK社の社長に声をかけられた。
だから何ということはないが、少し残念そうな聞き方が耳に残っている。



そんなことを考えながらエレベーターをおりた瀬波は、まっすぐ専務室に向かった。



廊下から中を見ると、青木真優は真剣な顔をしてPCに向かっている。

カチャ

「あ、お疲れさまです」

「どうですか?」

「はい、今日中には終わります」

「そうですか
 明日の午前中に終わっていれば大丈夫ですので
 中断して珈琲の用意をしていただけますか?
 まもなく桐谷専務が戻ります」

「え! あ、はい わかりました」


スッと立ち上がった真優に、専務が来てからでいいと言おうとしたが
瀬波は思い留まった。
そんなことを言わなくても、青木真優は冷めた珈琲を桐谷専務に出すようなことはしないだろうと思ったからだ。

廊下に出る真優を見送ってから、奥の専務室へと入った瀬波は
また考えを思い巡らせた。


秘書の交代について…



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