恋する淑女は、会議室で夢を見る



『少し頭に入れておいて』
あの時以降、その件について桐谷専務から何も言われていないが
そう言われている以上は、考えておかなければいけない。


そこにちょうど、思わぬところから該当者が現れた。

桐谷社長の第一秘書で瀬波の上司である津川が、ニューヨークから連れてきたケリーである。


彼女は社長に同行することになる遥人の補佐をさせるために来たわけだが、
津川の話ではそのまま専務秘書になる選択もあるという。

社長の元で津川から直接訓練を受けているだけあって、ケリーの仕事ぶりは申し分ない。


が…


頭の中ではそんなことを考え、手では書類を仕訳して専務のデスクに並べていると
桐谷専務が専務室へ入ってきた。


「お疲れさまです」

「お疲れ…」


午後1時。
桐谷専務は溜まっている雑務をこなすため、今日は午後から社長と別行動をとることになった。


連日神経をすり減らすように続く激務が、深いため息となって桐谷遥人の口から洩れる。


 ―― はぁ



秘書について相談してみようかと思った瀬波だったが、
とりあえず今は、すり減った専務の神経の修復が先だ。

「資料は揃えておきました。
 何かありましたらお呼びください」

「あぁ」

瀬波は静かに部屋を出ていった。
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