恋する淑女は、会議室で夢を見る
「失礼します」と、社長室を出た真優はゴクリと息を飲んだ。
―― まずい
目が合うとは予想していなかったせいなのか?
ドキッなんてもんじゃない、心臓がズキッとするほど驚いた。
ただの上司と部下
ただの上司と部下
ただの上司と部下!
呪文のように反芻しながら、真優は急ぎ足で自分の席に戻った。
仮にこの気持ちが恋だとわかったところで、
どうしようもない。
専務は私のことなんて一人前の女として見てくれていない。
それは痛いほどわかってる。
それに、専務の秘書はケリーに代わって
私はもうすぐここから出ることになるんだ。
だから、
―― どうしようもない…
そう言い聞かせた…。
・・・
そして午後
専務は専務室に戻って来た。
―― まずは、あやまらなくちゃ
珈琲を出し…
「ありがとう」
チラリと視線をあげると、また専務と目が合った。
心臓が駆け足で高鳴り、頬がカッと赤くなるのが自分でもわかって、
慌てた真優は、まくし立てるように謝った。
「この前はすいませんでしたっ!」
「ん?」
下げた頭を、そーっとまた上げると
専務は軽く首を傾げている。
「あ… あの
なんか…電話で
失礼なことを言ってしまって」
「ああー
”セクハラヤローが何言っちゃってんの?” 」
「ご…ごめんなさいっ!
あの…
もしかして専務…心配して来てくれたんですよね」
「まあね」