恋する淑女は、会議室で夢を見る
「ええ、
前にも話した通り、ママの家は旧華族とは名ばかりの貧乏で、ギリギリの生活をしていたし
世間知らずのママには真優みたいに働く手立てもなくて
結婚に頼るしかなかったの」
「…」
「でもね、真優
何人かとお見合いをしたけど
パパだけは別だったの
パパを心から好きになって、結婚したのよ
迷いなんて一つもなかったわ」
「だけどママ
女の子は、二番目に好きな人と結婚したほうが幸せになれるって、よく言うでしょ?」
「ん、そうね
ママが思うには、初恋の人が一番目だと思うの」
「初恋の人?」
「そう、初恋の人は不動の一番目
だからそれ以降好きになった人は全員二番目よ」
母はそう言って、イタズラっぽく笑った。
「真優、人生は後戻りできないんだもの
どうせなら、心から好きな人と結婚したらいいじゃない」
それから部屋に戻り、一人になった真優は考えた。
――だけどママ
好きな人と結婚できない時はどうしたらいいの?
今日、桐谷専務と目が合った時にわかった。
私は専務が好きだって…
でも、専務はモテモテで
家柄だって上流階級中の上流階級で
卑下する訳じゃないけど成金の青木家とは格が違い過ぎる。
それでも専務は優しいけど、それは私が秘書だからだ。
今日は異動のことは何も言われなかったけど
ケリーとはいつ交代することになるんだろう…
―― 辛いな…
胸が痛い…
専務を好きだという想いから逃げて
マー先輩の優しさに頼ろうとか思ってしまう私は
卑怯なのかな…
専務にもらったチョコレートの箱を開けて
真優はチョコレートを数えた。
一日一粒食べると、金曜日には食べ終わる。
そして土曜日を迎える…。
―― チョコレートは何か答えを出してくれるかな…