恋する淑女は、会議室で夢を見る


木曜日。


珈琲カップを置くと、いつものようにお礼を言った専務は、
「お昼、お弁当なの?」と、聞いてきた。

今日はお弁当は持ってきていない。
朝、晴れ渡った空を見ながら、お昼は気晴らしに外に出て何か買おうと思ったからだ。

「?
 いいえ」

「そう、じゃあランチに付き合って」

「! はい」



・・・



専務とのランチは久しぶりだ。
予約をしていると言って連れて来られた店は、
以前氷室先輩と来たことがある路地裏の隠れ家のような料亭だった。

「もしかして
 本当は氷室先輩とくるはずだったとか?」

「ううん
 今日は最初から君を誘おうと思ってた」

「え
 じゃあ私がお弁当を持ってきていたら
 どうしたんですか?」

「そのお弁当は持ち込みだな」

「えー
 そんなのありなんですか」

「んー、 特別ルール」

クスッ
クスクス




「君は本当に美味しそうに食べるんだな」

「え?
 だって美味しいじゃないですか」

向かい合うように座って専務と目が合っても、今日は大丈夫。
何故なら、LaLaと婚約の記事を見てからずっと、お腹の奥の方で疼く不満があるからだ。

それはきっとヤキモチとか嫉妬というものなんだろうけれども、こんな時には丁度いい。
お陰でポーっとならずに普通に話が出来る。
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