恋する淑女は、会議室で夢を見る

桐谷専務は、梅の甘露煮が入った小鉢を真優の膳の上に、コトッと置いた。

「どうぞ

 それで? 君は?
 CEOとどうなってるの?」

軽く唇を噛んだ真優は、
気を取り直したように梅の甘露煮を口に含み、
お茶をひと口飲んでから
土曜日にマー先輩が家に来て両親と会うという話をした。

「…ってことになりました。

 あ、でも
 だからと言って結婚が決まった挨拶とか
 そういうことじゃなくて」

「今度こそ、はっきりするね」

「え?
 あ … はい」

専務は、そのことについてはそれ以上、何も言わなかった。

「ところで君はお弁当って
 シェフに作ってもらってるの?」

「違いますっ
 自分で作ってます」

「えぇーー? ウソだ~」

「ほんとです!」

実は桐谷専務に ”珈琲は淹れられるんだ”と言われたあの日から
発奮してお弁当作りを始めたのだ。

最初はほとんどのおかずが、真優に教えながらシェフが作ったものだったが、今はちょっと違う。
玉子焼きも、キンピラも作れるようになった。
実は半分以上はシェフが朝ごはんを作りながら残してくれた料理を詰めているが
それはまぁ内緒である。

「へえー
 じゃあ 来週の月曜日
 俺の分も作ってきて」

「え!?」

「なに?出来ないの?」

「や、そんなことないですよ
 できますよ」

「楽しみだなぁ~」

「…」

クスッ
クスクス





・・・




その日の夜は、ホワイトチョコレートを食べた。

思わず頬がにやけるような甘い、
甘ーい、ハートのチョコレートだった…。




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