恋する淑女は、会議室で夢を見る
*...*...*...*...*
「大丈夫です」
担架を持ってきますという支配人の言葉を制し
桐谷遥人は真優を抱いたまま、歩みを止めることなく進んでいくが
―― 重たいだろうに…
ごめんなさい
真優はいっそ下ろしてもらって、
そのまま走って逃げたいくらいだった。
カツ
カツ カツ
歩調に合わせて、体も揺れる。
気絶をしていることになっているので
真優は、目を開けて周りを見ることもできないし、
腕を伸ばして、落ちないように掴まることもできない。
2本の腕だけで支えられているという、この体勢は
まるで、この命も何もかもを桐谷遥人に預けているようで
真優はなんとも心細い思いに囚われた。
「・・・」
それでも静かなエレベーターの中で
遥人の落ち着いた息づかいを聞いているうちに
そのゆっくりとした呼吸が、
真優の心を安心させ、落ち着かせてくれた。