恋する淑女は、会議室で夢を見る


・・・




「お…
 お疲れ様です 失礼します」

慌てふためきながら立ち去る青木真優を見送った遥人が
休憩コーナーを振り返ると、
そこにいたのは、氷室仁だった。


ニヤリと笑った遥人と仁は
高くあげた拳を、コンと合わせる。

昔からの挨拶だ。


「どうかなさいましたか 青木のお嬢様」

休憩コーナーに 他に人はいないので
ざっくばらんに、瀬波が仁に聞くと、

「あぁ…
 例の披露宴に出席していた取引先あたりから 洩れたんだな
 真優が青木コーポレーションの令嬢だということがバレて
 うちの部長やら課長やらが
 打合せに 真優を連れまわすようになってさ」

ため息まじりに、仁が首を振った。



仕事の内容もよく知らされずに
雑談要員で真優が連れまわされるようになったのは
披露宴に真優が出席した数日後からだった。

それまで進めてきた仕事も、担当も変えられて
今の真優は、忙しいだけで仕事の楽しさも感じられず
やりがいどころか、会社に来ることすら苦痛でしかなくなっていた。


状況をざっくり説明して

「ちょっと可哀想だな」と、仁は言った。
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