恋する淑女は、会議室で夢を見る



小さく微笑んだ華子先輩が

「まぁね
 それが組織だから」

真優を慰める。



「みんなそうよ
 真優じゃなくて誰が抜けたとしても
 何事もなかったように仕事は進んでいくわ
 香取さんが辞めた時も、そうだったじゃない」

香取さんとは、定年を迎えて先月の誕生日に退職した
第二営業部の次長だった香取女史のことである。

厳しくて、でも母のように優しくて
真優の憧れの上司の1人だった。


香取女史が辞めるその日

『香取次長がいなくなったら、
 私たち誰に相談したらいいんですか?』

華子先輩も真優も他の女子社員もみんなが泣いて
花束を持つ香取女史を囲んだことを思い出した。



「香取さん、
 どうしてるかなぁ…」

「あ、香取さんは相変わらず元気にしてますよ」

真優がスマートフォンを取り出して、華子に写真を見せた。


「見てください ほらほら
 マラソン大会に参加したんですって」

写真には完走証明書とメダルを手にしている
うれしそうな香取女史がいる。

「いいな~
 香取さんが元気だと、なんかうれしい」


そして2人は思い出した。
香取女史の元気な声を。


『大丈夫大丈夫
 私が辞めたって、ちゃんとお腹は空くし
 明日は普通にやってくるから

 KIRITANIは、永久に不滅よ~』
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