恋する淑女は、会議室で夢を見る



「お世話になりました 氷室先輩」

氷室先輩の飲みかけのグラスに、
真優はほんの少しビールを注いだ。


「サンキュ」




・・・




泣いちゃいけない
泣いちゃいけない

絶対に泣いちゃいけない。

呪文のように、心の中でそう唱えて唇を噛むと


「先に言っとくけど
 これからも結構会う機会があるぞ」

真優の心を見透かすように、
氷室先輩が先手を切るようにそんなことを言う。



「へ?」




「部長と課長だけは知ってるが
 俺は今後、遥人がらみで動くことがあるんだ
 だから常務室には顔を出すよ
 仕事によっては、真優に手伝ってもらうようになると思う」

「そうなんですか?」

うんうんと頷きながら
氷室先輩が横を向いて、軽く咳をした。


「悪いな真優…

 ちょっと風邪ひいたみたいで
 二次会は遠慮するよ」

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