恋する淑女は、会議室で夢を見る
「え! 先輩が風邪だなんて珍しい
大丈夫ですか?」
「1人暮らしの不摂生が祟ったかもな
今日はマンションじゃなくて
家に帰るよ」
「先輩…
1人暮らししてるんですか?」
普段から氷室先輩は、プライベートなことはまったく話さない。
なので、いつも一緒にいる真優も
氷室先輩がどんな生活をしているのか、まったく知らなかった。
「近くに、うちが所有するマンションがあるんだよ
時間の節約にもなるし
月の半分はそこにいるんだが、
何かとな…」
そして、小声で
「皆には内緒だぞ」
と、言う。
考えてみれば、真優は滝田家の令嬢の披露宴で、氷室先輩が上流階級の人だと知ったわけだが
会社の皆は、それを知らない。
御曹司だという噂があるくらいだから、もしかすると公然の秘密扱いなのかもしれないが
ともかく本人は、その素性について固く口を閉ざしたまま、公表する気持ちはないようだ。
真優は口を閉じて、うんうん と頷いた。
「…食事とか掃除とか、
どうしているんですか?」
小声でそう聞いてみて
真優はハッとした。
「もしかして…彼女さんが?…」
例のグラマーな美人が、脳裏に浮かぶ。