恋する淑女は、会議室で夢を見る



壁の上半分がガラス張りになっている廊下を進むと
大小の会議室と資料室と倉庫が並んでいる。


1週間前に説明を聞きにきた時には、ゆっくりと見る機会はなかった。

ひと部屋ひと部屋、確かめるように通り過ぎ
秘書室の前へ出た。

真優のように担当する役員の部屋に席を持つ秘書は少なく
ほとんどがこの広い秘書室にいる。

桐谷専務の第一秘書である瀬波も、この広い秘書室の中に個室を持っている。



真優が通りかかった時には、中央に並ぶ机に向かっている社員が何人かいて
足音を聞きつけたのだろう、その全員が顔をあげて廊下を振り返った。

ハッとしたように慌てて深々とお辞儀をした真優は
緊張しながらその先へ進んだ。




ドキドキ

いくつかの役員室を通り越した先に、桐谷専務の執務室がある。


―― ここだ


カチャ

そっとドアを閉じた。

―― フゥ…


専務の執務室と廊下の間という、狭い空間だが
自分だけの部屋だと思えば何やら贅沢な気がした。
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