恋する淑女は、会議室で夢を見る


時計を見れば8時。

フレックスなので
9時になったら、第一秘書の瀬波が
秘書課の面々に真優を紹介することになっていたが、9時まではあと1時間。
時間は十分にある。


真新しい机の引き出しに、自分の荷物をしまい込み
筆記用具やら事務用品のチェックをすると、あとはとりあえず することがない。


―― なにか出来ること…

少し考えて、廊下を眺め、給湯室を見つけた。

営業部にいた時は、自分で飲む分をいれるだけで、
お客さんが来た時は、派遣社員の女子がお茶を出すことになっていた。

でも秘書となれば、お茶入れも大事な仕事のうちになるだろう、
そう思いついて、廊下の隅の給湯室に行くと、先輩女性がひとりいた。


「おはようございます
 桐谷専務の秘書になりました青木真優です
 今日からよろしくお願いします」

「おはよう~よろしくね
 私は佐々木杏(ささき あん)
 第二営業部の華子の友人なの」

「え?華子先輩の?」

クスッ

「”私の可愛い後輩がいくからよろしく”って
 華子が言ってたわ」

「そうなんですか
 華子先輩優しいから…」

社内の女子には顔の広い真優だったが、
秘書課はフロアが遠く離れているということもあって
親しい人がいなかった。

なので少し不安だという旨を、華子先輩にこぼしていたのである。

そんな真優を心配して
友人に声をかけてくれていた華子先輩の心づかいがうれしい。
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