恋する淑女は、会議室で夢を見る

そういえば…

『あ、そうそう
 桐谷専務は、もしかしたら
 珈琲がお好きじゃないのかもしれないわね』

杏先輩が言っていたことを思いだした。


―― また聞くのを忘れちゃった


珈琲カップをさげる時は、いつも空になっていることを思えば
もしかして杏先輩の思い過ごしかもしれないな…
そんなことを思いながら
桐谷専務について少し考えてみた。





この数日間でわかったことがある。


桐谷専務は、キチンと礼を言い挨拶を欠かさない。

いつだって恐ろしく忙しいのに、イライラしているのを見たこともないし
愚痴を言うこともない。

時々報告に現れた社員を叱っていることはあるが、その気分を引きずる様子もない。

わからないことは”瀬波に聞いてみて”と言われたりするが
専務がわかっていることなら
どんな質問をしても、さっきのようにちゃんと答えてくれる。



そう

桐谷専務は、真優の予想に反して
とてもいい上司だった。
< 96 / 210 >

この作品をシェア

pagetop