恋する淑女は、会議室で夢を見る
そういえば…
『あ、そうそう
桐谷専務は、もしかしたら
珈琲がお好きじゃないのかもしれないわね』
杏先輩が言っていたことを思いだした。
―― また聞くのを忘れちゃった
珈琲カップをさげる時は、いつも空になっていることを思えば
もしかして杏先輩の思い過ごしかもしれないな…
そんなことを思いながら
桐谷専務について少し考えてみた。
この数日間でわかったことがある。
桐谷専務は、キチンと礼を言い挨拶を欠かさない。
いつだって恐ろしく忙しいのに、イライラしているのを見たこともないし
愚痴を言うこともない。
時々報告に現れた社員を叱っていることはあるが、その気分を引きずる様子もない。
わからないことは”瀬波に聞いてみて”と言われたりするが
専務がわかっていることなら
どんな質問をしても、さっきのようにちゃんと答えてくれる。
そう
桐谷専務は、真優の予想に反して
とてもいい上司だった。