恋する淑女は、会議室で夢を見る


ただ少しムカつくところもある。


それは、初めて珈琲を出した時だった。

ここに置いてと言われた通り
コースターの上に珈琲を置くと
桐谷専務はすぐにカップを手に取った。

そして、椅子に深くもたれ
香りを確かめるようにカップを揺らすと
真優を見上げながら

「ふーん…
 家でも自分で珈琲いれちゃったりするの?」

と聞いてきた。



「自分のは淹れてもらいます
 父のを時々淹れるだけで…」


中学生の頃、いつも忙しい父のために、
真優は美味しい淹れ方をユキに教えてもらった。

それから折に触れ、家でも仕事をする父に淹れてあげたりしているが、
自分の分は違う。

珈琲に限らず、
真優はいつもユキが用意してくれた飲み物を飲んでいる。



専務はその答え聞いてどう思ったのか
興味を失ったように真優から視線を外し、珈琲をひと口飲むと
書類に目を落とした。



あの時

  ”だろうね”と言われた気がした。

更に言うなら、

ピアノとかお嬢さまらしいことはしないのに
珈琲を淹れるとか料理をするとか、普通の子が出来ることも
それはそれで出来ないの?



――あの態度は絶対そう思ってる



…ったく 失礼な



壁越しに桐谷専務を睨んだ真優は
ツーンと澄ましてパソコンに向かった。


いいところ、プラス50点
ムカつくところ、マイナス50点
ってことで プラマイ0ね!

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