恋する淑女は、会議室で夢を見る



―― ハァ

と深いため息をつくと

あ!

廊下から氷室先輩が顔を出した。

先輩!




カチャ


「今、ため息ついてただろ」

「あはは
 ずっと一人だから 孤独で死にそうなんです」

クスッ

「専務と打ち合わせですか?」

「ああ
 真優
 ’あの珈琲’あるか?」

「はい!今日はあります!
 淹れますね」

ニッコリ微笑んだ氷室先輩が専務室に消えると

真優はバッグの中から缶を取り出して
給湯室へ向かった。

ルンルン


缶の中身は今朝挽いたばかりの珈琲豆が5杯分。
良い豆が手に入った時だけにシェフが持たせてくれる特別珈琲だ。

第二営業部にいた頃は、氷室先輩や華子先輩、同僚の高橋君とかに時々こっそり淹れてあげていたが
秘書になってからこの特別珈琲を持ってきたのは、今日が初めてだった。

3時のお茶の時に専務に出してみようと思っていたが
氷室先輩にも一緒ならちょうどよかった、と思いながら真優はニンマリと微笑んで
珈琲を淹れ始めた。


―― あ

専務にはさっき珈琲を出したばっかりだけど…氷室先輩だけに淹れるのも変だし…

―― ま、いいか
飲みたくなければ飲まないだけだしね
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