残業しないで帰りたい!

俊夫さんがいなくなってから、13年。

いろんなことがあったと思う。長くて、あっという間の13年。

香奈ちゃんみたいな意見を言えない臆病な子は苦手だと思ってたけど、いろいろ話して一緒に暮らしてみたら、思いのほか楽しかった。

私は新しい恋をして、新しい幸せを知って、新しい家族ができた。

香奈ちゃんも「就職したから独り暮らしをする」なんて言って離れていった。

そして香奈ちゃんは、俊夫さんが死んだ時の私と同じ25歳になって、なんと男を紹介したいと電話をかけてきた。

別に会わなくていいって言ったのに、どうしても連れて来たいと言う。

香奈ちゃん、今までこれっぽっちも男っ気がなかったのにどうしたの?騙されてない?

どんだけ変な男を連れて来るのかと思っていたら、香奈ちゃんは二度見するほどのイケメンを連れて来た。

香奈ちゃん、まさかこのイケメンを私に見せびらかしに来たの?こいつ、結婚詐欺師じゃないよね?騙されてない?

でも聞いたら同じ会社の上司だって言うから、まあ騙されているってことはないのかもしれない。

なんか、悔しい……。

「ずいぶんイイ男じゃない?でも、男は稼ぎが一番だよ」

悔し紛れにそんなことを言ったけど、香奈ちゃんの左手の指輪がキラッと目の端に写ってまた二度見した。香奈ちゃんのラフな格好には似つかわしくない、光り輝くお品物……。

アレは相当覚悟がないと買わないよ?管理職とはいえ、サラリーマンにはかなりの高額だよ?香奈ちゃん、全然わかってないでしょう?

つまりこの男、本気なわけね?そこまでしても香奈ちゃんを逃したくない、と?

うーん。
やっぱりなんか、悔しいな。
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