残業しないで帰りたい!
そんなことを思っていたら、イケメンが話しかけてきた。
「ずっと伺いたいと思っていたのですが、あなたは香奈さんが犯罪の被害に遭った時、どうしてあんな酷いことを言ったんですか?」
なに……!?
そんなこと、聞くか?
なんかコイツ、感じ悪いな。
ふーん……、どうしても連れて来たいなんて、何かと思ったら。
この男、それが聞きたくて私に会いたかったわけね?
香奈ちゃんはどんなふうに私のことをこの男に話したんだろう。
自分のことを傷付けたひどい継母、とか?
……。
いや、わかってる。
香奈ちゃんは本当にそういうことを言う子じゃない。
人を疑ってばかりの私と違って、香奈ちゃんは驚くほど純真だもの。
正反対の私たちは、案外いいペアだったのかもしれないね?
「あの時のこと……か。香奈ちゃん、気にしてるの?」
「いえ!今は気にしてません」
香奈ちゃんは勢いよく首を振ってそう言ったけれど、イケメンは間髪入れずに口を挟んだ。
「でも前は気にしてた。君はあの言葉に深く傷付けられたんだ」
そうだよね?
やっぱり、そうだよね?
わかってた……。
わかってたよ。
私が香奈ちゃんのことを傷付けたって、私、ずっと前からわかってた。
「あれねえ、あんなこと言って、私も一生の不覚だったと思ってる」
こんな風に一生の不覚を認められるなんて、私もずいぶん丸くなったものだ。
私がどうしてあんなことを言ったのかを話すと、香奈ちゃんは驚いた顔をした。
私が覚えていたことに驚いてるんでしょ?私にだって罪悪感くらいあるんだから!
罪悪感どころか、今でも私の手首には見えない重たい手錠がかかってる。
「……ねえ、香奈ちゃん?」
「は、はい」
「ごめんね」
14年間ずっと言えなかった『ごめんね』は、案外すんなり口から出てきた。
もっと早く素直に言えば良かったんだ。